瓜が2つ。
世の中には物事をよく知っている人というのがいる。
昔から落語なんかには物知りなご隠居が出てくるが、現代ではご隠居なんてなかなかいないし、隠居するくらいなら近所の公園でゲートボールにでも興じているだろう。
ご隠居じゃないけど、物知りな人から聞いた話。
「瓜二つ」という言葉がある。
よく似たものの例えである。
同じ苗からできる瓜はそっくりだ、という意味だと思っていたのだが、瓜を二つに割るとどっちもそっくりだ、という意味だそうだ。
私もある程度ものは知っているつもりだが、つもりはつもり。
学習することはたくさんある。
瓜二つといえば、また私のバカ話。
もう10年くらい前のことだろうか。
街中で「あら~。」と年配のおばちゃんに声をかけられた。
セールスとかアンケートの類ではない。
明らかに私のことを知っている。
感じからして仕事の関係だと思う。
それならば失礼があってはならない。
…ならないので、当たり障りのない話題をしながら探ってみたがどうしてもわからない。
まさか、今になって「アンタだれ?」などとは口が裂けても言えない。
しかし、これ以上会話ももちそうにないし、会話が噛み合わないトンチンカンなことになってボロが出るのは目に見えている。
もう最後の手段だ。
私はこう言った。
「あー、ごめんなさい。そりゃあ兄貴のほうですね。あたしら双子なんですけどソックリなんでよく間違われるんですよ~。」
おばちゃんはこう言った。
「あら~、よく似てるわね~。」
あたり前だっつーの。
後日、そのおばちゃんと仕事で会った。
「こないだ弟さんに会ったんだけど間違えちゃったわよ~。よく似てるわね~」って言われた。
実際にそのおばちゃんはものスゴくエラい人だったので、結果としてあの場ではベストな選択をしたのではないかと思っている。
少なくとも「アンタだれ?」ってゆうのは言わなくてよかった。
いまから考えれば、「兄貴に伝えときますのでどちら様ですか?」っていうさらにベストな選択肢があった気がするんだけど、それは過去の話ということであきらめよう。
それからたまに双子ネタは使っていたのだが、体型の変化もありバレバレになっちゃうので使わなくなった。
だって、いくら双子だって同じタイミングで太ったり痩せたりするわけないもんね。
しかし、一時期私のことをよく知らない人に対しては、悪いことはみんな双子の兄貴のせいにしていた。
考えてみれば彼に対しては非常に悪いことをしたなぁ、と思っている。
まぁ、私自身も私の双子の兄貴には会ったことがないけどね。
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