古典芸能に触れてみた。
先々月のこと。
世田谷区のお知らせに、キャロットタワーで行われる能と狂言のお知らせが載りました。
こりゃあいい、と思って田舎に電話をすると女房のおばあちゃんは大喜び。
おばあちゃんは能とか狂言とかが大好きなのです。
自分でも謡をやってるしね。
前から観世能楽堂に行きたいって言ってたから連れてってあげようかと思ってたらちょうど三軒茶屋での公演。
三茶で能や狂言が見られるならけっこうなことです。
キャロットタワーの中にパブリックシアターっていう劇場があります。
そこのプロデューサーが野村萬斎氏なのです。
今回は野村萬斎氏が中心となった公演です。
…たぶん。
チケットを取ったのが1月前。
そんなに混んじゃねーだろ?と思って電話したらつながらないつながらない。
こういうときは公衆電話の方がつながりやすいと聞いたことがあるので、近所の公衆電話へ。
久しぶりに公衆電話を使いましたが、奇跡的に財布の中にテレフォンカードが入っていました。
しかし、今どきの公衆電話は便利なものですな。
オンフックとかリダイヤルが使えるんですね。
おかげで30分使いまくりました。
そしたらつながったんですよ、30分後に。
もう奇跡ですね。
私は、能も狂言も見たことがありません。
前もって勉強しておこうと思っていましたが時間がなくてそれもできませんでした。
当日。
会場に行きました。
間違いなく私が一番若いだろうと思っていたらさにあらず。
けっこう若い人がいるじゃあございませんか。
舞台上に能舞台がしつらえてあります。
おばあちゃんの話だと能舞台というのは本来こういう形ではないそうですが、初めて見る私にはよくわかりません。
おばあちゃんは「若い人が見ても退屈でしょ?」といいますが、見たことがないので退屈かどうかわかりません。
でも、一度は見ておかないと退屈なのかつまらないのかもわかりませんし、ひょっとしたらこれがきっかけで能にハマるかもしれません。
案外。
さて内容ですが、これが素晴らしいものでした。
最初の演目は「翁・三番叟」。
お祝いのときにしか行われないそうで、滅多に見られない演目だそうです。
おばあちゃんも初めて見たって言ってましたし。
お祝いの宴が開かれるという演目らしいのですが、残念ながら内容はよくわかりません。
しかしながら、その音楽のすごいこと!
鼓が4つと笛のみです。
それと声。
すっ…げー迫力でしたよ。
鼓と笛しかないことを忘れてしまうくらいです。
それと、この演目は梅若六郎師。
言わずと知れた能の世界の人間国宝です。
さすがの私もこの方のお名前は存じ上げてました。
どの方かよくわからなかったのですが、登場したらすぐにわかりました。
その貫禄、存在感が群を抜いています。
能についてはもう少し大人になったらその素晴らしさがきっとわかるでしょう。
次は狂言。
演目は「靭猿(うつぼざる)」です。
こっちはちょっとわかったので簡単に解説を。
靭というのは矢を入れるケースのことです。
あらすじは、ある大名が狩りの最中に猿を連れた猿使いと出会います。
その猿の毛並みの美しさに、その皮を靭にかぶせたいと思った大名はその猿の皮をくれと言います。
もちろん猿が生きたままでは皮は手に入りません。
ここから、大名とその召使である太郎冠者、そして猿使いとの会話で進行していきます。
ちなみに猿使いを演じるのが野村萬斎氏です。
実は、会社の係長に前もって、能と狂言に行くと言っておきました。
狂言って昔の漫才とか喜劇なんですよねぇ。
笑っていいんですかねぇ?
「能と違って狂言は言ってることがわかるから面白いよ」。
あーそーなんだ。
結果は…。
おもしろかったよー。
狂言。
しかし、野村萬斎という人は天才ですね。
もちろん陰には弛まぬ努力があるのでしょうが見とれてしまったぐらいです。
で、猿使いが萬斎氏なのですが、その猿使いが連れている猿の役が、萬斎氏の息子である裕基くん。
猿独特のクセやしぐさを演じるのだが、かわいかったです。
おばあちゃんの話だとこの役は子役のアテ役で、この「靭猿」自体が野村家が代々演じている演目だそうで、おばあちゃんは萬斎氏がまだ子どものころにこの猿を演じた靭猿を見たことがあるそうです。
最初は大名が美しい毛並みの猿を見つけて、猿使いに話しかけるところから始まるのですが、大名から猿使いの会話は、すべて太郎冠者を通じて行います。
逆も同様です。
こんなに近いんだから太郎冠者に伝えてることは直接全部聞こえてるってば、と突っ込みたくなる状況から話は進みます。
大名は猿使いに猿を譲るようにしつこく頼みます。
猿使いは小さなころから育ててきたのに、と泣き出してしまいます。
その様子を見ていた大名はその様子に「かわいそうだ」ともらい泣きしてしまうのです。
…お前のせいだってば!と突っ込まずにはいられません。
若い人も見た方がいいですよ、これは。
能の迫力と、狂言の滑稽さは十分に伝わるものがありました。
また見てみたいなぁ、という気持ちになりましたね。
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