五日市で紅葉を…?
地名というのは面白い。
その土地の歴史や背景なんかが文字に表れていることがしばしばある。
東京というのは江戸の昔から「諸国の掃き溜め」などと言われているが、なかなかどうしてローカル色が強い場所もある。
特に西多摩方面には面白い地名や不思議な地名が多い。
そしてこれらの地名は得てして難読地名になることが多い。
これらの地名を一番わかりやすく見られるのはもちろん住所である。
その次は駅やバス停、信号の名前なんかに現れる。
駅というのは鉄道があるから存在するのであって、鉄道がなければ駅はない。
鉄道というのはある程度平坦な場所でなくては存在することはできない。
鉄道マニアとしては歯がゆいのだが、ある程度山の中に入ってしまえばそこはバスの独壇場となる。
先ほど例にあげた西多摩地区は東京でもかなりの山の中であり、鉄道は奥多摩もしくは武蔵五日市までしか通っていない。
そこから先はバスのみが通っているわけだが、この地域には変わった地名がたくさんある。
バスの路線図を見るとワクワクするようなバス停の名前がたくさん並んでいる。
一度これらのバス停を巡ってみたいなぁと思っていた。
しかし、これらの多くは1時間に1本程度、もしくはそれ以下の本数のバスしか走っていないため、巡るにはクルマということになる。
しかし、ここのところのガソリンの価格の高騰もあってどうしようかと悩んでいた。
そこにあるお話が。
魔女(私の母親)が「紅葉が見たい」と言い出したのだ。
うん、こりゃあいい。
だって、紅葉が見たいなら車に乗せときゃいいだけだし、私がバス停を回ろうがなにしようが文句はないはずだ。
それに、ただバス停を回るより紅葉を見ながら回ったほうが私だって気分がいい。
じゃあ、お互いの利害が一致したってことで出かけようということになった。
いつ?
明日?
OK。
気が早いって?
うちはいつもこうである。
せっかく行くんだから、と弟一家にも声をかけると残念ながら弟は仕事。
でもあーちゃんママはお休みなのであーちゃんと一緒に参加することになった。
実家のある八王子に集合し、出発!
まずは近場で、西八王子駅の近くの甲州街道沿いのいちょう並木を見に行くことに。
ここは以前にも来てみたことがあるが、そのときはまだ時期が早くて紅葉…あ、いちょうの場合は黄葉か、黄葉していなくて残念な思いをしたのだが…。
うわ!
緑っ!!
そうだよなぁ、今年あったかいもんなぁ。
気温のことを忘れてたよ。
でも一部はこんな色になってて、黄葉してるといえばしてる。
…ように見える。
…気がする。
じゃあ、と気を入れなおして次の目的地に向かおう。
次は私が行きたいバス停に、ということで陣馬高原に向かう。
「高原」なんていう名前がついているが東京にも「高原」があるのだ。
陣馬高原なら紅葉もしているかもしれない。
陣馬高原に向かう道は霊園が多く存在している小高い丘を越えることになる。
そこはこんな感じ。
ちょうど都営八王子霊園のあたりである。
ここだけは見事に紅葉していて大変美しい。
ちなみにこのあたりは霊園だけでなく、火葬場、葬儀屋、葬儀式場、墓石屋といろんなライフターミナル施設が揃っている。
なので霊柩車が写っているのはご愛敬。
その陣馬高原のちょっと手前に「夕焼小焼」というバス停がある。
バスマニアの中では比較的有名な場所だと思う。
私も行ったことがないので楽しみにして行ってみた。
おそらく鄙びた場所にポツリとバス停があるのだろう。
そのそばには「夕焼小焼の碑」があるという。
きっと小さな碑でローカル色に溢れ、「まぁ素敵」ってなモンだろう。
そんな勝手な思い込みで夕焼小焼に到着すると…。
まぁ、なんと立派な平城京…、じゃなかったバス停でしょ。
大きくて見事なロータリーです。
周辺にはでっかい駐車場が2つもあります。
そして、確かにここが「夕焼小焼」です。
敷地の中には資料館や農産物を売るお店などがあります。
気がつくと魔女をはじめとした女性陣が野菜を買う買う。
あのねぇ、まだ1箇所目なんだけど。
あ、そうだ。
「夕焼小焼の碑」は…?
どこだ?
あ、なんか見える。
近づいてみたら…。
ここから5分か。
そんじゃぁそんなに遠くは…。
そう思って見上げてみたら前の写真のとおり目前は山である。
山なのである。
おまけにここも紅葉していない。
分け入っても分け入っても青い山なのだ。
…種田山頭火か。
えっと…、ムリ。
こういうときはあきらめが肝心。
さ、次に行こう。
次は五日市でいいね。
そうしたら魔女が、「五日市に美味しいこんにゃく屋さんがある。行きたい。」とのこと。
場所は?
「知らない。」
…知らないって、知らなきゃ行けねーべ。
「駅からは先だった気がする。」
重要な情報だね。
「二又に分かれた道路を右に行って川を越えるんだと思った。」
たぶんその条件に当てはまるのは十里木(じゅうりぎ)しかないと思うんだけど…。
「十里木ではないと思う。」
あ、そうなの?
十里木はバーベキューに行く場所だよな。
だから何回かは十里木までは行ったことあるけど、そこから先は詳しくないなぁ。
携帯で探してみてもなかなかうまくヒットしない。
ま、行ってみりゃわかるでしょ?
そう思って行ってみた。
十里木を超えたら…。
「ここから檜原村」。
おーい!
あきる野市終わっちゃったよ!
五日市はあきる野市にある。
ちなみにあきる野市は旧秋川市と旧五日市町が合併してできた市だ。
ってことはここから先にこんにゃく屋はないぞ。
気がついたら「檜原村役場」まで来ちゃったよ。
ここからしばらく行ったところに行ってみたいバス停があるんだけど先に行ってみていいかな?
というわけで、行ってみたのだが途中に「この先12km車両通行不能」の文字。
私が行きたいバス停は終点から1つ手前にある。
バスは道路があるところまでは行っているだろう。
ということはあと12km近く先にあるってことだな。
そんなんで12km走って到着したバス停がコチラ。
その名も「下除毛」。
なんだかビキニのお姉さんがデリケートなゾーンを処理しているような名前だ。
しかしながらもちろん読み方は「しもじょもう」ではない。
これは「しもよけ」と読むのだ。
これを見るためだけにここまできた自分が大好きである。
ちなみに本数はこんな感じ。
多いのか少ないのか分からないがまあこんなところなのだろう。
ちなみにSuicaもPasmoも使えない。
困った。
困んないか。
近くに「除毛橋」という橋があり、「よけばし」と書いてあったのでこのあたりの集落を「除毛」というのだろう。
変わった地名なのでいわれが気になってインターネットで調べてみたのだがどうにもわからない。
今度檜原村に行ったときに図書館にでも寄って調べてみたい。
そのまま1つ先の終点である「藤倉」まで行ってみたかったのだが、除毛橋で道が三叉路になっていてどっちが終点だかわからなかったので行けなかった。
探したかったけど家族も一緒だったしね。
このあたりがワガママの利く限界だな。
ここも今度行ったとき終点探しをしてみたい。
でもどの道路もバスが入っていけそうな感じじゃないんだけどなぁ…。
この時点で午後1時。
そろそろお腹もすいたのでお昼にしたい。
今日は魔女がお弁当を作ってきてくれているのでどこでも食べられるのだが、このあたりにはお昼が食べられそうな場所はない。
どうしよう。
そしたら魔女が「たしかこんにゃく屋は十里木にあったと思う」と言い出した。
さっき違うって言ってたやんけ!
「いや、総合的に分析して私の中で十里木しかあり得ないという結論に達した」だそうな。
頼むから1時間半前に言ってくれ。
じゃあ、十里木まで戻るか…。
でもここから十里木まで戻る間にお腹は持たないな。
あ、そうだ。来るときに「払沢の滝(ほっさわのたき)」があったな。
あそこに寄ってお弁当を食べようかな。
払沢の滝というのは東京にありながら、なかなかの名瀑であると聞いた気がする。
じゃあとりあえず行ってみよう。
行きがてら気になっていたバス停に寄ってみた。
それは「千足」。
なんて読むんだろ?
「むかで」かな?
なんでそんな名前なんだろ?
と思ったら読み方は「せんぞく」。
…普通だ。
よく考えたらそりゃそうだよな。
だって「むかで」は「百足」だもん。
勝手に10倍に増やしちゃいけません。
そして払沢の滝に到着。
ここも何気に難読地名。
ここでお弁当を食べた。
本当はここから檜原街道、奥多摩周遊道路と抜け奥多摩に行きたかったのだが、今日そのコースをたどって八王子まで帰ったら確実に真夜中になってしまう。
しょうがないので、今日はここで滝を見て、十里木に行って帰ることとしよう。
では滝見物に行こう。
だいたいな地図に好感が持てる。
コレを見る限りそんな遠くはないのかな?
滝まで行く最中にはこんな素晴らしくさわやかな景色を見ることができる。
そして、近づいてみると…。
まぁ、なんと水のきれいなこと。
ここは檜原という「村」ではあるもののまぎれもなく東京都なのである。
東京にもこんなところがあるのだ。
そんなに距離はないだろうという予想は的中し、滝までは歩いて10分。
けっこうお手軽に見ることができる。
こちらが払沢の滝。
確かにウワサ通りの名瀑である。
よく見ると三重に折れ曲がっている。
三重なのは下から見て確認できる範囲だけなのでひょっとしたらもっと折れ曲がっているやも知れぬ。
ちなみにうちの女房は滝マニア。
いかがですか?
「なかなかですね。滝というのは滝壺なんですよね。滝壺見れてナンボなわけです。」
なるほど。
この上に登れば滝壺が見えるようなので登ってみると…。
なかなかの滝壺だと思いますがどうでしょう?
「立派です。東京でこれだけの滝を見られれば満足です。」
なるほど。
でも雄大だ。
というよりデカくて携帯のカメラに入らない。
そんで上から下まで無理やり入れて撮ったのがこの写真。
首が痛くなりますがすみません。
その下には当然川が流れていますが、こちらをごらんあれ。
わかるかな?
そう、川床にある岩がすべて一枚岩なのである。
コレにはちょいと感動した。
スゴい。
帰り際、こんなカンバンを発見。
なんだよぉ。
遊泳禁止なのかよぉ。
早く言ってくれよぉ。
危うく泳ぐとこだったぜ。
…絶対に泳がない、ココでは。
駐車場まで戻ってきて周りを見回してみる。
やっぱりここでも紅葉にはまだ早いか。
あと2週間ってとこだな。
しかし、思いつきで寄ったものの払沢の滝は思いのほかよかった。
また来てみてもいいかな。
さて、おなかもいっぱいになったし、あとはこんにゃく屋さんに寄って帰ろうか。
そんなこんなで、それから十里木に戻って十里木の信号を左折。
武蔵五日市駅から来た場合は右折だ。
すぐに落合橋を越えると「一穂」の看板。
その看板を右折する。
あれ、この道でいいの?っていうくらいの道をぬけると「こんにゃくの池谷」がある。
一穂はブランドネームのようだ。
ここで、魔女がお目当ての干しこんにゃくとやらを買う。
それがコチラ。
さっそく私もいただいてみる。
…なかなかじゃん。
それどころかかなりイケるぞ。
コレうまいよ!!
私も買ってこ!
…というわけで私も5個も買ってしまった。
中身は一瞬こんにゃくだとは思わない。
イカとかタコとかそんな感じだ。
干したこんにゃくを醤油と砂糖で味付けしてあって、トウガラシが効いている。
お酒が飲みたくなるね、これ。
ちなみに口の中でしばらくモグモグしているとこんにゃくに戻るので、ああ確かにこりゃあこんにゃくだ、と思う。
1袋400円。
決して高いとは言えないと思う。
なにせココでしか買えないんだから。
ここではいろんなこんにゃくを買っていったのだが、「大トロこんにゃく」や「とろこんにゃく」という刺身こんにゃくはとても美味しかったし、普通のこんにゃくも柔らかくてとってもおいしかった。
スーパーでしかこんにゃくを買ったことのない人の場合は、こんにゃくに対する認識が変わると思う。
五日市に行かれた際は是非寄ってみていただきたい。
うーん、干しこんにゃくうまいなぁ。
こんにゃく…こんにゃく打法といえば梨田だよなぁ。
来年から日本ハムの監督だよなぁ…。
などと全然関係ないことを一穂の前の景色を見ながら思う。
ちなみに景色はこんな感じ。
美しいよね。
職場が近ければこんなところに住んでみたいなぁ、と思ってしまう。
というわけで長くなったけどこれが今回のご報告。
次回は檜原から奥多摩方面の珍名バス停を取材してきたいと思う。
できれば一人で…。
あ、わかったよ、連れてくってば。
ホントだって、女房殿。
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