ちょっと前のこと。
学生時代のツレの嵐パパからメールが来て、「久しぶりに夜釣りに行こう!」と。
いいねぇ、久しぶりに釣りがしたいね。
元々、私は釣り糸さえ垂らしてれば満足の太公望。
最近は行ってないんだけどね。
場所は八景島だって。
防波堤にいいスポットがあるらしい。
私は船釣りが多いので、陸からの釣りはほぼ初心者。
なので、初心者マークを付けつつ渋谷の上州屋で「初心者セット」などをまったりとお買い物。
サビキと投げ釣りの両方の仕掛けを用意。
ちなみにサビキとは、撒き餌を使って釣る方法で足下の魚を釣るのに適している。
いっぽう投げ釣りは文字通り投げる釣り方で、こちらはエサを針に付けて釣る。
さあ、道具も揃ったし張り切って行くぜぃ。
でも、お道具箱を見たら上州屋に行かなくても仕掛けはけっこう揃ってたことはナイショ。
当日、夜中に嵐パパと待ち合わせして八景島に出発!
近くのコンビニでイソメ(エサになる虫)とコマセ(撒き餌)を購入。
釣りスポットの近くのコンビニにはエサをはじめとした釣りのセットが売っているのだ。
現場に到着して驚いた。
夜だよ、そりゃ夜さ。
暗いのは当たり前。
でも思った以上に真っ暗なんだよ。
ホントに真っ暗。
嵐パパは用意がいいのでヘッドライトを持参してたけど、私は忘れた。
あー、よく見えない。
ま、夜明けになれば何とかなるだろう。
竿を2本出してそれぞれの仕掛けをセット。
でも、防波堤から顔を出してみたら周りはテトラポットだし、足下はコンクリのステージがある。
この時点でサビキは諦めた。
投げ釣りの竿をヒョイっとスイングし、ポチャン。
当然、そんなカンタンにお魚さんも引っかかってくれない。
ちょっと上げてみようか、と思ったら…。
ん?ん?ん?
ありゃりゃ、根がかりだ〜。
根がかりとゆうのは、地面に針が引っかかっちゃうことで、よく「地球を釣っちゃった」ってのがこれ。
しょうがなく、釣り竿を振り回しなんとか外す。
最初からこれじゃ先が思いやられるなぁ…。
そしたら、隣でも嵐パパが「ん?ん?ん?」っと同じ事を言っている。
やはり根がかりのようだ。
そう言えば上州屋のお兄ちゃんが「八景は根がかりするんスよねぇ」って言ってたっけな。
次のエサを付けて投げる。
…また根がかり。
これも何とか外して投げる。
…また根がかり。
ところがだ。
今度はそうカンタンに外れてくれない。
参ったなぁ…。
これで外れなきゃ、サビキを投げ釣りの仕掛けに変えるかなぁ…。
などと苦闘すること30分。
ようやく針が外れ、引き上げる。
でも手応えがおかしい。
なんか重い。
そう思って巻いていると、なんとビックリ魚がかかっているではないか。
おお!
ズングリムックリした魚だ。
「ギンポじゃね?」
そうだよ、ギンポだよ。
天ぷらにすっとウマいよなぁ、などとこの時点でこの魚がギンポだと半ば思い込んでいる私。
上がって来たけどよく見えない。
針を外そうとしたらどうも針を飲み込んじゃってるみたい。
あぁ、針外しで外さなきゃ…。
そう思って針外しを取り出し外しにかかる。
魚を掴む。
嵐パパがライトで照らしてくれる。
そのとき顔が見えて気がついた。
あれ?
ギンポにヒゲなんかあったっけ?
と思った時にはもう遅かった。
「いで〜〜〜!!!」
胸びれが手に刺さったのである。
「…それ、ゴンズイじゃね?」
隣から嵐パパが声をかける。
…私もいま正にそう思ってた。
ゴンズイってさ、刺されたらヤバいよな?と当たり前のことを聞いてみる。
「ヤバい。」
…だよな。
知ってる。
ゴンズイは背びれと胸びれに毒棘があるのだ。
ゴンズイを触っちゃいかん、なんてゆうのは海釣りの初歩の初歩、最初に教わることだ。
ギンポだとゆう思い込みがあったとはいえどうにも情けない。
しかし、その情けなさのさらにその上を行く痛み。
いやぁ、痛い。
刺さったのは親指と人差し指の間。
ホンの数ミリのはずだけど、これが痛い、熱い、痺れる。
慌てて、刺された傷口の根元を押さえる。
「ちょっとさ、オレ対処法調べてみるわ」と嵐パパが調べてくれる。
まず、棘を抜く。
うん、それは刺さってない。
あとは?
ションベンでもかけろってか?
「そりゃハチだよ。」
そうだな。
「えっと…お湯につける。」
残念だが、ここにはお湯は絶対にないし、そもそも水場がない。
海の生物の毒はタンパク系の毒が多いからお湯につけろ、ってゆうのは常識らしいのだが、あれはホントだったか。
「あとは…草津の湯につける。」
はぁ?
なにそれ?
そう思って見てみたらホントに書いてある。
温泉の素でもいいらしいけど、そんなモンあるワケがない。
で、今見た方法は全滅なワケだが、あとはどんな方法がある?
「病院に行く。」
…だろうな。
私は痛みに強い方で、以前にカサゴにも刺されたことがある。
カサゴの時は驚くほど腫れたが、今回はそんなに腫れてない。
その代わり今回はモノスゴく痛い。
親指から人差し指は完全に交通渋滞のマヒ状態。
しかもヒジまで痺れて来た。
元々病院は好きじゃないし、ちょっとやそっとのことじゃ病院には行かないが、今回ばかりは「行っといたら?」ってもう一人の自分が囁いている。
…だよね。
ネットにはご丁寧に「死亡例もありまっせ」って書いてあることだし。
とゆうワケで最初の1匹目で1万分の1の当たりを引いちゃった私は何もすることもなく、まさに「ゴンズイに刺されに来ただけ」で引き上げることになったのである。
まったく、何をしに来たんだか…。
嵐パパ、すまんのぉ。
これ以上ないぐらいのお荷物な私。
嵐パパに救急病院を探してもらい、港南台に見つけたのでそちらに向かう。
そこには一応救急医がいて、診察らしいこともしてもらったのだが多くは語るまい。
私は急患なのだが、大変ノンビリと対応していただいた。
ネットでは評判がいいのでそれなりの病院だと思うのだが、救急はダメだった。
運がなかったのだろう。
傷口は小さいし、大したことでもないのに大騒ぎしやがって、ってな感じだったんだろうけど、こっちは「痛い」から「相当痛い」、さらに「かなり痛い」から「激痛」のレベルに達していたのでそれどころじゃないのだ。
痛み止めぐらい診察中にくれてもいいだろうし、注射の一発でも打ってくれれば良かったのだが「注射も飲み薬も同じですよ」と宣った。
…ウソこけ。
診察らしきモノも終わり、廊下で待っていたのだがあまりに痛いので「とりあえずすぐに痛み止めだけでももらえませんかね?」と声をかけたのだが「今出しますから!」と一蹴。
その後10分間放置。
こうゆう時の10分は長い。
最後に看護士が「今日はたまたま医師がいましたからいいですけど、適当に来られてもいつもいるとは限りませんから」の捨て台詞。
さすがに「119番に電話して深夜の当番医を探して来たんだ!」と反論する。
いつもならこんなことを言われたら激烈にブチ切れて大暴れするのだが、こっちは激痛でそれどころではない。
感謝しろよ、クソ病院め。

それから嵐パパに自宅まで送ってもらった。
悪かったなぁ、なんもしないで帰って来ちゃってなぁ。
「じゃ、次、月末な。」
おうよ!
次はリベンジだぜ!
すぐにでも釣りに行きたいぜ!
…気持ちはね。
手が言うことを利かないから今日はムリだけどな。
痛み止めはなかなか効かねーし。
ホントに痛い時はちょっとやそっとの痛み止めじゃ効かないのだよ。
よくわかった。
自宅に帰ったのが6時チョイ前。
もちろん朝である。
女房は寝ている。
参ったよ、ゴンズイに刺されちゃってさ…。
「あそ。zzz…。」
以上。
刺されてから3時間。
痛み止めも飲み、念のための抗生物質も飲んだけど痛いモンは痛い。
そこで、さっきネットに載っていた「お湯につける」方法を試してみた。
台所で45度のお湯を用意する。
私は江戸っ子らしく熱い風呂が好きだが、さすがに45度には入らない。
それじゃ熱湯コマーシャルである。
洗面器にお湯を張って手をつけてみた。
…お!
ホントだ!
これがジョーダンかと思うぐらいに痛みが引いちゃったのだ。
すげー!
…ここで女房が出勤。
お湯につけているとラクなのだが、お湯から出すとまた途端に痛みがぶり返す。
つけているお湯も冷めてしまうので、取り替えなければならない。
しばらくつけていると手がふやけておばあさんの手になるし、あまり熱いと低温ヤケドでそっちの方が重篤になってしまう。
お湯につけるとラクなカラクリは、毒の正体がタンパク質であるため、タンパク質が50度ちょっとで分解される…とゆうことにあるらしい。
当然50度のお湯に手をつけることは厳しいが、分解途上とゆうことでラクになるのでは?と勝手に考えてみた。
でも、毒が消えるワケではない。
消えてくれるまでは痛みに耐えるしかないのだ。
お湯に手をつけるのはその緩和療法でしかない、とゆうことを付け加えておく。
ネットを見ると「ゴンズイに刺された痛みで陣痛の痛みを思い出した」って記述もある。
これが陣痛の痛みなら、私は間違いなく出産はできない。
オトコで良かった、ゴンズイに刺されたぐらいなら良かったのでは?とヘンな所で胸を撫で下ろし、ゴンズイに感謝するとゆうとんでもなく的外れな感情まで沸き立つ。
改めて見てみると、痛いのは傷口よりも親指と人差し指である。
そして腫れてはいないけど、傷口の周りは赤くなっている。
その赤い部分だけに汗が吹き出ていて、肌のキメがガサガサになっている。
うーん、なんだか不思議な現象だ。
興味深い。
しかし、それ以上に痛い。
それでもなんとか、昼頃までには痛みも引いて来た。
なんせ相手は毒である。
大げさなことを言えば死にかねないのである。
手指の無事を確かめるために、指はこまめに動かすようにした。
動けば、「あー、まだ死なない」と。
しかし、痛いには痛かったし、実際にはしていないけれどのたうち回って悶絶するくらいだった。
でも我ながら冷静だった気がする。
実際になんかあった時でもこうして冷静なまま死ぬのかなぁ、と縁起でもないことを思ったりした。
なんにしても、今回の敗因は「暗闇」である。
なにも見えないってことは情報がないってことで、やっぱり情報弱者はダメなのである。
次回はシッカリと灯りを持って行こう。
あと、最大の敗因は「油断」である。
さすがの私でも「ゴンズイに刺されたら大変」ってことぐらいはアタマの中ではわかっているのだが、実践できずに失敗した。
そうだよなぁ、ギンポってそんな型がいいワケないよなぁ、って言ったらノブが「いや、そんなことないよ、こないだオレが上げたギンポは20センチ超だったよ、ギンポって思っても仕方ないよ」って言ってくれたんだけど、それでもギンポって思い込んじゃってたもんな。
いつもは船釣りで重装備、手もウエットスーツの手袋でガードしているのだが、陸釣りってことで完全に油断していたのである。
しかも、手袋は持っていたのにしなかったのである。
油断以外の何物でもない。
それに、根がかりの最中にかかった魚ってことで、魚に対する注意も薄れていたことも確かだ。
それに、ゴンズイちゃんは美味しいらしいのである。
まぁ、ナマズの親戚だからね。
ウマいわな。
次に釣り上げたら細心の注意を払い、たっぷり食ってやる。
ゴンズイは「ゴンズイ玉」と言われるくらい群生しているそうな。
ってことは1匹釣れたらたくさん釣れるのである。
トングとでっかいニッパーを持って待機しなくては。
なんにしても海にいるナマズには要注意である。
あとヌルっとしてる魚も要注意である。
なんでも、あのヌルリには毒があるらしいとゆうことがわかっている。
この毒は火を通せば分解されるので焼けば問題はない。
なので、ウナギやアナゴは生食しないのである。
日本人は昔からわかってたんだね。
なんにしても、ここんとこ腎結石や胃痙攣、そしてゴンズイ。
痛いことのオンパレードである。
もちろん痛いことは望んでいるワケもない。
痛いとゆうのは悲しいことである。
でも、せっかくカラダを張っているのだから誰かのお役に立てればいいなぁ、と思うのでこんな恥っつぁらしなことも書いちゃうのである。
へへん、と。
◆後日談◆
ちなみに余談だが、2日後にいつもの通りマッサージに行き、ゴンズイに刺されたことを話した。
傷は小ちゃいんだけどさ、すげー痛かったよ。
刺されたのはここだけど、ヒジの途中のここまで痺れたよ、なんて話をした。
すると「あー、そこは手指と神経がつながってるんで、手がやられたらそこの神経もやられますよ」って。
あー、そうなの。
なんだぁ、じゃあここまで痺れても気にすることはなかったんだ。
「いや…、そうゆうことじゃないです。病院に行って正解ですよ」ってさ。
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